
「 シェーン……カムバーック! 」
遠く聳える山々にこだまするジョイ少年の声。
ゆっくりと馬に揺られ、少しずつ遠ざかるシェーンの後ろ姿……。
西部劇の不朽の名作 「 シェーン 」 のラストシーンですが、あの印象的なメロディと共に、懐かしく思い出される皆様もいらっしゃるかもしれません。
いきなりの 「 シェーン 」 に、シェー……ん?と驚かれた皆様、大変失礼致しました。
今回は 「 変化への適応 」 のまた別の側面からのキーワード、「 カムバック 」 についてのご案内です。
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皆様の組織では、退職したアルバイト・パートさんが 「 カムバック 」 し易い風土や制度は整っているでしょうか?
以前募集採用のヒントの項でも少しだけ触れましたが、終身雇用の時代には馴染まなかった 「 離職者の復職 」 も、時代の変化と共に重要な人材戦略の一つになってきました。
最近は、リタリーリクルーティングという名称で、
ソーシャルリクルーティング…フェイスブック、ツィッター等SNSを活用した採用手法
リファラルリクルーティング…従業員、取引先等から友人・知人の紹介を募る採用手法
ダイレクトリクルーティング…経営層や採用担当者が自ら人材を探しアプローチする手法
などと共に、新たな採用活動手法として急速に広がってきてもいます。
「 復職制度 」 「 再雇用制度 」 「 カムバック制度 」 「 ジョブリターン制度 」 等など、各企業で様々な名称で活用されていますが、共通するのは
「 既に自社の理解・共感度が高く 」
「 即戦力若しくはそれ以上に成長した人材 」
を容易に採用できる…という点。
アルバイト・パート層の多い組織では、離職時の 「 ジョブリターン資格カード 」 の発行や 「 フレキシブルジョブ資格証 」 の授与式等、資格要素やイベント性を交えた工夫も増え、
「 カムバック制度の導入で、求人費が大幅に削減できた 」
「 ジョブリターン制度の活用で、人材に恵まれ、充実した繁忙期に繋がった 」
など様々な効果や成果を生み出しています。
もちろん、正社員層への活用も拡大。
こちらは緻密に設計・運用されている大企業の事例だけでなく、人と組織のいっそう親密な関係性に支えられた、中小企業の成功事例にも数多く出会います。
労働力人口が減少に転じ、ゆっくりと進行している時代。
「 結ばれた縁を大切にする 」 人材戦略……も、変化への対応の一つの形です。
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他の人事制度や仕組みと同様、こちらも制度の内容や運用ルールばかりが注目されますが、活用にあたり最も重要なのは、「 カムバックし易い風土 」 が醸成されているか……という点です。
「 リタリーリクルーティング 」「 カムバック制度 」 が充分に活用されている組織の共通点は、制度内容や運用ではなく、「 人と組織と仕事の関係性がすこぶる良好 」で、仕組みが 「 組織風土とフィットする 」 ところにあります。
自社や自組織で働く充実度。
その仕事のやりがいや喜び。
共に働く仲間、チームとしての良好な関係性……。
「 カムバック 」 の制度や仕組みが充分に活用されるためには、まずこういった土壌の醸成が大前提になるわけです。
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この意味で、「 カムバック 」 の対極に位置しているのが 「 代わりはいくらでもいる 」 といった価値観です。
「 活性スパイラルに舵を切る 」 でも触れましたが、5人採用しても6人辞めてしまった……なかなか定着してくれない……などのお悩みの裏側に、所詮アルバイト・パートだから……いつでも入れ替えれば良い……等の価値観の影はないか、照らしてみることも大切です。
先日、採用や人事を担う方々と、
「 各組織の人材戦略の活性度は、カムバック制度がイメージできるかで測定できる 」
という話題で大いに盛り上がる機会を頂きました。
「 カムバック 」 がイメージできる組織は、
「 働いた経験が、充実した時間として思い出されている組織 」
「 共に汗を流した上司や同僚を、笑顔と共に思い浮かべられる組織 」
でもあります。
変化する時代の中、組織活性度や人材戦略の活性度を測る視界……の一つにもなりつつある「 リタリーリクルーティング 」や「 カムバック制度 」 。
労働力人口の減少が進む現在。
代わりはいくらでもいる……という時代は、ラストシーンのシェーンのように、ゆっくりと遠ざかっていくようです。
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