
ご案内している誰が育てる?どう育てる?
前回ご案内した5つのステップには、ぜひ組み合わせたい 「 強い味方 」 があります。
それが、
① 質問
② 傾聴
③ 感知
という3つのスキル。
育成の上手い方は、5つのステップの中、要所々々質問を交え、メンバーの応えを傾聴し、表情や動作なども含めてその理解度や伝わり具合を感知しながら進めます。
ひとつずつ簡単に掘り下げておきましょう。
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質問については、ここでは基本となる3つの質問をご紹介しておきましょう。
① メンバーの現状を把握するための質問
「 新入社員研修では、〇〇についてどんなふうに教わった? 」
「 〇〇は、どのくらい知っている? 」
② メンバーの考え方や想いを知る質問
「 〇〇についてはどう思う? 」
「 〇〇と◇◇だと、どっちが良い? 」
③ 確認のための質問
「 〇〇で大切なポイントは、どこだったかな? 」
「 〇〇については、解ってくれたかな? 」
これらの質問は組み合わせて使いこなすことで効果を高めます。
質問を組み合わせ、習得度や進捗度合いをはかったり、課題やその原因を明らかにしたり、そして何よりメンバー自身に 「 自ら考える 」 ことを促したりするわけです。
ただし、メンバーの習得度合いによって、有効な質問と空回りしてしまう質問があることも押さえておきたいところです。
ここも後程詳しくご案内しますが、まだスキルも知識もなく、何もわからない新人に、
「 どうしたら良いと思う? 」 「 どうしたい? 」
という質問ばかりをしてもなかなか上手くいきません。
一方、力をつけ、自信をつけてきた段階で、新入社員にするような初歩的な質問を繰り返すのも逆に上手くいかないものです。
質問はメンバーの成長に合わせギヤチェンジする……ここは、こちらの項をご参照頂ければ幸いです。
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続いて傾聴についてです。
まず前回の言葉に続き、こちらの言葉をご紹介しておきましょう。
『 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず 』
再び、山本五十六元帥の言葉です。
人材育成や指導……と聞くと、一方的に知識やスキルを教えるイメージを思い浮かべる方もいらっしゃいますが、上手な育成担当者ほど 「 話し合い 」 ……つまり対話型の指導育成になっています。
質問と傾聴を繰り返しながら、教える……というより 「 気づき 」 や 「 考えさせる 」 ことを通して、育成する5つの領域を高めているのです。
かのソクラテスしかり。かの吉田松陰しかり。
古くから、人材育成の達人たちは皆、一方的に伝えるのではなく 「 対話型 」 です。
ここで大切になるのが、傾聴力。
傾聴力では、単にメンバーの言葉に誠実に耳を傾けるだけではなく、受け止めているというサインを示しながら聴くことが大切です。
相槌や頷き、表情や身振り手振りなどで、メンバーにわかりやすく示しながら聴く。
『 聞く 』 のではなく 『 聴く 』 という感覚が、メンバーに宿る可能性や本音を引き出し、5つのステップをより活きたものにしていきます。
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最後は、感知についてです。
感知力とは、文字通り感じ知る力のこと。
質問や傾聴は、この感知力を伴ってはじめて冥利を発揮します。
メンバーが 「 言っていること 」 と 「 言わんとしていること 」 の微妙な違い。
今、目の前のメンバーが本当に必要としていること。
ここが鈍感だと、5つのステップや質問や傾聴も全て表面的なものになってしまいます。
メンバーの表情や視線。しゃべり方や声の変化。手や足先の微妙な動作。
人材育成の上手い方々は、メンバーが話す言葉だけでなく、メンバーの小さな変化から感知したものを活かしながら指導・育成を進めます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、言葉を話すどころかその意志表示もままなりません。
けれどお腹を痛めたお母さんは、赤ちゃんの微妙な仕草だけで何が必要かを感知します。
育成メンバーは決して赤ちゃんではありませんが、深い愛情を注ぎ込む……という点では、共通です。
育成を担うに当たり、もう一度お母さんから学ぶこと……も、たくさんあると言えますね。
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