アクトビジョン 人と組織の未来のために

8月, 2012年

2012-08-30

新入社員研修の課題

『 多くの会社の新入社員研修が内包している、最大の課題を知っていますか? 』

先日、人事や採用に携わる方々と一献酌み交わしていた時のことです。

私の大先輩でもあり、人事や採用の世界で30年……というDさんが何気なく口にした言葉に、銘々が応えるシーンがありました。

「 全員一律でひとり一人に細やかに対応しきれない 」

「 あれもこれもと詰め込み過ぎて、結局半分も残っていない 」

「 外部研修など予算が掛かりすぎる 」

「 配属先のスタンダードレベルとの、微妙なズレ 」

「 毎年の新入社員の変化に、プログラムが合わせきれていない 」

そして最後に、「 時々、何人か寝ている…… 」

ここで一同苦笑いを浮かべたところで、Dさんが静かに呟きます。

「 せっかくやる気になっている新入社員を、悪気なく受動的な姿勢にしてしまうこと 」

この言葉には、皆いっせいに頷いてしまいました。

次から次へ、きめ細かく準備されるプログラム。

待っているだけで、上げ膳据え膳のように与えられていく課題や教材。

時間がくると、次にやることが用意されているという至れり尽くせりの一日。

これが1週間……場合によって1か月以上続く組織もある。

『 ああ、会社ってこんなふうにいろいろ用意してくれるものなんだ…… 』

入社初日、武者震いしながら出社したのもつかの間。新入社員たちの内面に、いつのまにか受け身の姿勢が入り込み、会社とはこういうところなんだと恒常化してしまう。

だから配属先の職場に戻っても、

「 今日は何をやったらいいんですか? 」

と当たり前のように指示を待つ。

これが 「 仕事は与えてもらえるもの、成長はさせてもらえるもの 」 という受け身の姿勢の原因のひとつなんじゃないか……と嘆きます。

◊ ◊ ◊

Dさんの会社では、数年前からこの流れを感じ取り、新入社員研修のやり方をガラリと変えてみたそうです。

まず最初は、

「 研修前、新入社員自ら習得目標を立ててもらう」

ことから着手。

上げ膳据え膳で用意するのではなく、研修の前に 「 学びたいこと、身に着けたいこと」 を自ら主体的に決める行程を挿むようにしたといいます。

前日に、おおよその研修テーマや内容を伝えておき、その上でひとり一人に何のために何を学ぶかを考えてもらう。

これだけで研修は、与えられるものではなく、自ら主体的に学びたいものに変わります。

感度が上がり、研修内容の吸収度が高まるという、嬉しい副産物も付いてきたそうです。

続いて、これまで用意して教えていた内容を精査し、

「 自分たちで調べられることは、自分たちで情報を集めてまとめ、互いに発表し合う」

という形を取り入れてみました。

例えば、自社の事業領域や仕事の流れなどを、数人ごとのグループに分け、事業別に研究。

WEBページや社内資料等の情報はもちろん、あらかじめ渡された取材を受けてくれる先輩や各組織マネジメントを担う方々のリストから、情報を持っていそうな人を自分たちで選び、自分たちでアポイントをとって取材。

これをパワーポイントなどにまとめ、互いが講師となり教え合う……という形式です。

実際の仕事は、自ら調べ、自らアポイントを取り、自らプレゼンテーションするもの。

仕事の本来の姿にも近く、確実に主体的な姿勢が育まれます。

また取材では、ビジネスマナー、アポイントなど、他の研修内容が早速試されます。

より良い取材ができるよう、他の研修にも懸命に臨むという副産物も付いてきたそうです。

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2012-08-24

人材育成の大前提 ‐ 成長の「主役」は本人

組織活性化のための人材育成のヒント集。

これまでを振り返ると 『 どう育てるか? 』 と、なんだか 「 主役 」 が企業側や上司側……育成する本人の周り……にあるように受け取る方もいらっしゃるかもしれません。

そこで最後に、

『 成長の主役は、あくまでも本人 』

である……ということを、改めて押さえておきましょう。
 
 
私の持論のひとつでもありますが、

成長の 「 機会 」 や 「 環境 」 はいくらでも提供できる。
けれど 「 成長 」 自体を提供することはできない。

という真理を忘れて人材育成にあたると、これまでご案内したことは全て本末転倒になってしまいます。

成長の機会や環境はいくらでも提供するけれど、それは上げ膳据え膳、至れり尽くせり……ということではない。

本人が受け身の姿勢で 「 成長させてもらえる 」 ……と周りをあてにしている姿ではなく、主体的に 「 自ら成長しようする」 姿こそが、これまでのご案内の大前提です。

◊ ◊ ◊

「 最近の新入社員はどうも受け身で…… 」

多くの企業様のお声です。

言われたことは卒なくこなすけれど、自ら能動的に動く姿が少ない。

研修でグループごとにリーダーを決めようとしたら、互いに譲り合って誰も手を上げない。

解らない事があったらどんどん質問、相談してね……と伝えても、質問や相談がないまま、結局自分たちなりのやり方で小さく自己完結してしまうことが多い。

・    「 社会の中の自分 」 から 「 自分の中の社会 」

・    「 自分らしく 」 から 「 自分サイズ 」

・    「 閉じられた連帯感 」 、「 コミュニティキャラ 」 、「 自己肯定による自己完結 」

など、ここ数年は背景となる若者意識の変化を表した言葉が次々と生まれ、

「 なんだか、いつまでも空気を読んでいるというか……失敗を極端に恐れるというか…… 」

というお声が多くなっているように感じます。
※これらのキーワードの背景は こちら で少し掘り下げています。

ここで人事を担う方々の多くは、そもそも……と、採用手法へも視界を広げていきますが、それでは来年まで待たなければならず、根本解決にはなりません。

受け身の姿勢から、能動的な姿勢。

自己完結で小粒な成果から、周囲を巻き込み大きな成果。

言われたことだけでなく、言われたこと+α……そして言われなくてもやるべきことを探し、積極的に挑戦し成し遂げる。

そんな、自発的、主体的に行動する姿へ、変化を促すかかわり方の工夫が必要なようです。

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2012-08-20

ティーチング機能とコーチング機能②

部下や後輩の育成を担う皆様をはじめ、企業経営者やマネジメントに携わる皆様を応援する 「 人材育成 」 のヒント集。

人材育成の5つの基本機能 。

いよいよ最後のご案内です。

 
前回 ご紹介したように、 「 ティーチング機能 」「 コーチング機能 」 はどちらが有効というわけではなく、育成段階に応じ 「 活用のウエイト 」 を変えていくことが、より良い人材育成のポイントです。

私はこれを自動車やバイクに例え、 「 かかわり方には4つのギアがありまして…… 」 と、

4つの視点で 『 かかわり方のギアチェンジ 』

をすることをお勧めしています。

人材育成 かかわり方のギアチェンジ

1速
「 指示や教える 」 場面が多く 「 援助や支援 」 が少ない育成初期段階

2速
「 指示や教える 」 場面も相変らず多いが 「 援助や支援 」 的なかかわりも多くなる段階

3速
「 指示や教える 」 場面が少なくなり 「 援助や支援 」 的なかかわりが多いままの段階

TOPギア
「 指示や教える 」 場面も 「 援助や支援 」 的なかかわりも少なくなる自立・自走の段階

上図は、これら4つの段階と、メンバーの成長に合わせた 『 かかわり方のギアチェンジ 』 を簡単に整理したものです。

 
これは、自動車やバイクの運転に例えてご説明するとわかり易いでしょう。

まず1速で走りだし、スピードが乗ってきたら2速へ。

そして、2速で更にスピードが乗ってきたら3速ギアへ……。

これが最もスムーズで、最も安全な走り方です。

1速でいきなり100Km以上で走ろうとしても、なかなか上手くいきませんよね。

1速のまま高速道路を走り続けていたら……エンジンは煙を出して壊れてしまうかもしれません……。

1速には1速の適正な加速と速度、2速には2速の適正な加速と速度がある。

実はこれは、自動車やバイクを最も 「 いたわる 」 走り方でもあるんだそうです。

 
人材育成の様々な場面でも、このイメージはとても有効です。

まず基本を教える、指示するという 「 ティーチング機能 」 主体で育成し、基本を習得してある成長段階になったならかかわり方のギアチェンジ

次は 「 ティーチング機能 」「 コーチング機能 」 も、両方多いかかわり方へ変えていきます。

そして自立していく段階では、意図して 「 ティーチング機能 」 を少なく。

さらに自立・自走人材まで加速したら「 コーチング機能 」も減り、やがてメンバーは教えられる立場から、教える立場へと巣立っていくことでしょう。

育成担当者として、一生懸命後輩とかかわる中、『 ここまで成長したのに、最近どうも伸び悩んでいる…… 』 と感じたら、

『 かかわり方のギアチェンジ 』 をしないまま育成を進めていないか

振り返ってみることが大切です。

 
一方で、メンバーの特性によっては、ギアチェンジを共有しておくことも大切なポイントです。

例えば、これまではすぐ答えを教えなければならなかった相談の場面。

「 凄いな。もう〇〇については、すっかり身についたね 」

「 もう〇〇については相談ではなく、確認しながら進めてみようか 」

「 これからは、〇〇について、自分はどう思う、自分はどうしたい……を教えてもらえると嬉しいんだけど、どうかな? 」

と、かかわり方のギアチェンジを投げかけてみるわけです。

これまではすぐに答えを教えるかかわり方だったけれど、これから変える。

それをある日突然一方的にするのではなく、メンバーと一緒にシフトレバーに手を伸ばし、「 一緒にシフトアップする わけです。

もちろんその前提として、メンバーの成長への喜びを伝えることを忘れずに。

ギアチェンジは、メンバーを最も 「 いたわる 」 かかわり方でもあるのですから……。 

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